若い頃、まだお弟子さん時代に黒留袖を作りました。
黒留は礼装になりますので、いろいろと決まりごとがあります。
紋も5つ紋で、結婚式など式典に着用されるので、柄は格調高い吉祥文様であったり、華やかさが必要です。
鶴・鴛鴦、古典柄・有職文様・・・。
裾模様で細かくびっしりつまったものが一般的です。
この頃のあまり礼装に関する知識が乏しい私は、何が描かれているのか近づいて見なければわからないような細かい密集した柄が嫌いでした。
柄部分地色にぼかしが入って裾に重みのある着物が綺麗には見えませんでした。
せっかくの黒地なのだから、あいまいに周りをぼかしたりせずに、はっきりと柄の形をみせればいいのに・・・・。
鶴や鴛鴦のよくある模様じゃなくて、白鷺の方が綺麗で好きだなぁ。
梅・桜・牡丹・菊・蘭・・・・・、古典柄はありふれていてつまらない。
ぱっと華やかな花よりも、静かに咲く野草の方が趣あって素敵なのに・・・
鷺の部分アップ画像
左 上前
右 背の左側
左 下前側
中 背の右側
右 下前おくみ
野菊 柄のアップ
野菊をスケッチしてデザイン化、流れを作り、彩色は好きな色。
黒地に白い糸目(柄の周りの輪郭線)の線はきつく思えて、薄いグレーの色糊を野菊部分に使っています。(写真ではわかりにくいかもしれません)
仕事の依頼ではなくて、自分用の着物なので、七五三の着物同様好きなように作っています。
デザイン力もデッサン力も想いに追いつかず、中途半端に写実的ですね。
秋の野菊に白鷺は夏毛。季節感もむちゃくちゃ。
「着物は少し季節を先取りして着るのが粋で、季節外れは野暮。」
本当にその通りだと思いますが、「自分が綺麗だと思う柄が一番いいんじゃない?」って反抗心もチラリ。
「作りたい」って意識が先走りして、視野が狭い時期だったと思います。
今もたぶんあまり「作りたい病」は変わりません。
少しだけ昔と違うことは、
「礼装は式典であり、周りを不快にさせない装いであること」を充分に意識していることかなぁ。
本当に当たり前のことですね。
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