「昔のきものに教えられたこと」
石川 あき 著
草思社 刊
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ちょっと今回は文章が長くなりそうです。
2~3日前から夢中になってこの本を読んでいました。
この本で得た知識を数回に分けて紹介します。
まずは、著者の紹介から。(本から抜書きまとめ)
著者は、石川あきさん
着物研究家。
昭和2年、奈良の旧家生まれ。
伊勢丹服飾研究室・東急きものサロン に以前従事。
NHK「婦人百科」 「婦人画報」で活躍
本文P178から抜粋 きものはゆとりで着こなす 寸法
「身幅のせまいきものほど着にくくて、着たとき不恰好なものはない」(・・・中略・・・)
身幅は広いほうがきれいです。後ろ幅より前幅を広くしたほうが着やすいとする意見もありますが、これはまったく反対です。前幅が広いと、着たときの脇の縫い目が後ろ寄りになるため、座ったり腰をかけたとき褄下が横に流れる率が多いのです。また脇の縫い目は身体の前寄りになるほう(後ろ幅を広くするほう)が、細く見えるという利点があります。
(・・・後略・・・)
細い作者が当時の並寸(前幅6寸 後幅7寸5分)で仕立てた時、とても着にくくて、男物並寸(前幅6寸5分 後幅8寸)に仕立て直したと書かれています。
私は、日頃から着物の寸法について疑問に思っていたことが多々あったので、この文章を読んだ時、すごく驚き納得した部分もありました。
ちょっと横道にそれますが、次の写真を見てください。
日本の衣
楠目 ちづ(華道家 いけばな「むらさき会」主宰)
上の写真はずいぶん前の雑誌「きものサロン」の記事の切り抜きです。
白黒の写真で少しわかりにくいので、特大画像にしてみました。
写真のページのみ切り抜いたので、いつの号かわかりません。
華道に関してもまったくわからないので、この方がどのような方なのかも失礼ですが知りません。
着物の中で生き生きと咲いている野花。
写真がはっきり写っていないので何の花かもわからないのですが、紫花菜(むらさきはなな)でしょうか? 違うような
木のような枝は梅か木瓜(ぼけ)か・・・。
立ち姿の凛とした美しい高齢の方が身にまとい、かわいく微笑んでいられるこんな風な静かな着物が作りたいなぁと、切り抜きました。
スクラップ帳を開くたびに、白黒なのにこの写真が目に飛び込んできて気になって・・・。
そのうち、着物だけでなく、着姿の意識が強くなった時、脇の縫い目がかなり前に来ていることに気がつきました。
これだけ美しく身体になじんだ着姿なのに、寸法が合ってない?
私の根拠のない着物常識では、左わき線がま横にくるのがピッタリ寸法です。
当然ご自分の寸法で作られているだろうに何故?
話はまた飛びます。
今度は自分の寸法・家族の寸法にふれてみたいと思います。
先程も書きましたが、昔の女物並寸は、前幅6寸 後幅7寸5分です。
今の着物は、前幅6寸5分 後幅8寸で作ります。
私は痩せたことのないがっちり体型なのですが、若い頃母に作ってもらった着物の寸法は、後幅7寸8分 前幅6寸5分でした。
今は後ろ幅8寸で、それで充分普通に着れます。
この今の標準寸法はいくらお腹にタオルでいっぱい補正しても、普通体型の女の人には大きいのではないかと常々疑問に思っていました。
私の娘は、親に似ず華奢でかなり細身です。
黒の振袖のページでも書きましたが、みんなが着れるように標準寸法で作ったら、下前のおくみを内に折り曲げて着せてもらっていました。(身幅が補正してもかなり広すぎたのです)
当然、背の中心線がずいぶん右側にずれて、後姿が制作意図と違ってしまいました。
また、私の母から譲り受けた着物は、後幅が7寸8分で、前巾が6寸です。
母は標準体型で太ってもなく細くもなく・・・。
前巾がずいぶん狭いですよね。
わき線をま横にもっていくと前巾が短くて、座ると前がはだけてしまい、とても着にくい着物だと思っていました。
長々とあっちこっちに寄り道しましたが、石川あきさんの文章の話に戻ります。
この本を読んでいて、
「わきの縫い目をわざと前にずらして着やすくしているんだ」
と、はじめて気がつきました。
あの写真の方もしかり。うちの母もしかり。
昔の人は自分に合った着方を自然にしているんです。
私たちは、本当に着物を着なくなった世代なのですね。
私は、着物の仕事をしながら、あまりにも着物の着方について知らなさ過ぎることを改めて実感しました。
「着物ってもっと自由でいいんじゃない」なんてずっと思い、「自分なりに工夫すればいい」と口にしながら、変な固定観念が染み付いているんです。
もちろん、寸法に関しては人それぞれ着方があって、石川あきさんの文章に反発する方もおられるでしょう。
お茶をお稽古していて座ることが多い人は、前巾は広く取る方がいいと言われるでしょう。
私自身、縫い目を横ぴったりに合わせるのがいいのか、前に持ってくる方が着やすくて綺麗なのか、よくわかりません。
でも、やっぱりあの白黒写真は本当に美しく、その美しいことが何よりの答えだと思う次第です。
ずいぶん長い文章になってしまいました。
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